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2012/06/02 [野球部]

主将、決死のプレーもサヨナラならず。伝統の重圧に屈する−対慶応1回戦

伝統の重み。独特の雰囲気が両校の命運を左右した早慶戦だった。
早稲田先発は大方の予想を裏切り、梨(雄平,スポ2)ではなく吉永(健太朗,スポ1)。昨夏甲子園のヒーローであり、今季の防御率NO.1 投手はエースの証である早慶1回戦先発マウンドを任された。1年生春で早慶1回戦先発投手になるのは斎藤佑樹(現日本ハム)でさえも成しえなかった快挙である。

しかし、1回。先頭の福谷(浩司,4年)に投じた2球目が高めに行くと、ボールはそのまま左翼スタンドへ。早慶戦独自の雰囲気と立ち見も出た大観衆の熱気に押しつぶされたか、マウンド上に普段の吉永の姿はなかった。それは同じ1年生の茂木(栄五郎,文構1)も同様。サード線上への簡単なゴロにもたつき悪送球。これは打者がファールと迷ったこともあり三ゴロで事なきを得たが、茂木はその後も緊張のためか危ない守備が続いた。
早めに追いつきたい早稲田は直後の1回裏にチャンスを作る。慶応先発の福谷から1番・中村(奨吾,スポ2)がヒットで出塁すると四球が続き2死満塁。ここで6番に定着した茂木。けれども打撃でも本来の力が出せず、福谷に力負けして内野ゴロに終わって無得点で1回を終える。

2回以降も吉永は毎回ランナーを出す苦しい展開が続く。彼の調子が戻ることはなく、パスボールで1点を献上し、続く打者にこの日5個目の四球を与えると、5回途中で涙を浮かべながらマウンドを降りた。その後早稲田は安達(公亮,スポ2)、丸山(達也,スポ3)、内田(聖人,教1)とつなぎ、7回にソロホームランを打たれるも3点差のまま打線の援護を待つ。
慶応は福谷が尻上りに調子を上げ、4年生中心の守備にもファインプレーが飛び出すなど、落ち着いた試合運びを見せる。経験が乏しい早稲田ナインはどこか浮ついて、本来の力を出し切れない。この嫌な流れを変えたのは数少ない4年生たちだった。

8回裏、最初に魅せたのは今日もベンチスタートとなった悩める主将・佐々木(孝樹,スポ4)。一塁コーチャーとしてチームを鼓舞し続けた男がバットでも盛り上げる。お手本のようなセンター前ヒットで出塁すると、続く高橋(直樹,スポ4)への2球目、キャッチャーが弾いた一瞬の隙に盗塁を決める。同じく4年の高橋も1塁ゴロでカバーに入った福谷に競り勝ち、意地の内野安打を決める。この回は後続が続かず、得点こそならなかったものの、慶応一辺倒の流れが変わった。

このままでは福谷の完封が決まる9回裏。今度は主砲・杉山(翔大,スポ4)が追撃の火蓋を切った。3塁線を破る2塁打を放つと、再びキャッチャーが弾いた隙に三塁へヘッドスライディング。1死三塁とチャンスを広げると、ようやく下級生も本来の動きになってきた。茂木の打球は平凡な内野ゴロだったが、ジャンプで1塁手のタッチを掻い潜ると内野安打に。その間に杉山が帰還するとようやく神宮に「紺碧の空」が鳴り響く。こうなったら早稲田は強い。小野田(俊介,社2)が粘って四球を選ぶと慶応はたまらず福谷を諦める。マウンドに竹内(大助,4年)、打席には佐々木が入ると神宮が俄然盛り上がりをみせる。二人の勝負はカウント0-2からの3球目をセンター前に返した佐々木に軍配。その後敬遠もあり、9回裏1死満塁で慶応のリードは僅か1点。一打サヨナラの好機で打席には中村。彼もまた2-1と早々追いこまれても動じず、2球ファールで粘った後の6球目。快音とともに打球は慶応の前進守備を突き抜けライト前へ。まず3走が帰塁して同点、そして2走・佐々木も俊足を活かして迷わずホームへ。
今季、誰よりも苦しみ、誰よりもチームを勇気づけてきた佐々木。しかし、決死のクロスプレーに砂ぼこりの中で無情にもアウトの判定が下る。負傷した佐々木は起き上がることが出来ず、そのまま担架でベンチに下がってしまう。主将の思いを無駄にできない早稲田ナインであったが、動揺は隠せなかった。代打土屋(遼太,教2)が三振に倒れると、主将不在の延長戦では有原(航平,スポ2)が2本の三塁打を含む3安打2失点と大乱調。結果、5-3で敗れてしまった。

明日負けても優勝パレードはできる。しかし岡村(猛)監督を胴上げできるのは勝った時だけだ。
今日の前半は雰囲気にのまれミスも多かったが、最終回の勢いは今季の早稲田そのものだった。明日は負傷した佐々木の分まで奮起して、前半から早稲田ペースで本来の力を発揮することが求められる。


 

関連URL
早稲田大学野球部公式サイト

(TEXT=鈴木崇広)
 


 
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